列車乗っ取りがテーマの映画

映画の舞台に鉄道を利用した作品は多くあるが、全編に渡ってその醍醐味を生かしたものとなると、何らかの理由で暴走を始めた列車を制御下に取り戻すまでを描くというストーリーが王道である。パターンとして大きく3つほどに分けられる。

一つは列車をハイジャックした犯人が乗客や鉄道の安全を引き換えに何かを要求するパターン。1974年の『サブウェイ・パニック』がその走りで、運転指令室のCTC制御盤に示された列車の在線位置で指令員が異変に気づき、犯人との交渉を行うシーンが効果的に使われた。この手法はその後多くの作品に影響を与え、この映画は2度リメイクもされている。

二つめは『暴走機関車』のように、故障して物理的にコントロールを失った列車をいかにして止めるかという、力づくのアクションやパニックの要素が大きいもの。『カサンドラ・クロス』では軍の攻撃で外部から列車ごと抹殺されるという危機が描かれた。

もう一つは、犯人が列車に積まれた金品を強奪しようとしてその攻防を描いたもの。『大列車強盗』や『マネー・トレイン』がこのパターン。

線路の上を走るという鉄道の特性上、暴走する列車と言えど進路はある程度絞られてくる。その制約を逆手に取って犯人が以下に逃げ仰せるかがキーとなることも多い。列車を安全に止めるためにある保安装置が効果的に使われ、またそれをいかに回避して暴走させるかというところも見所となる。『古畑任三郎』では実際の列車運行に影響を与えず、指令室内の情報だけで乗っ取ったように見せると言う大胆かつ異色の犯行だった。『交渉人 真下正義』では一部鉄道用語の使い方がおかしいところもあったが、東京の地下に張り巡らされた路線網を特殊車両が次々に乗り換えていくことで予想がつかない展開を見せた。




サブウェイ・パニック
(原題:THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE)
(1974年/アメリカ/100分)


サブウェイ・パニック1:23PM』
THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE
(1998年/アメリカ/90分)
テレビ映画。リメイク。


『サブウェイ123 激突』
THE TAKING OF PELHAM 1 2 3
(2009年/アメリカ/105分)
リメイク。


新幹線大爆破
(1975年/東映/152分)
(『SUPER EXPRESS 109』フランス語版100分、英語版115分)
高倉健ほか東映俳優陣が出演。「ひかり109号に爆弾を仕掛けた。時速80キロになるとスイッチが入り、再び80キロを下回ると爆発する。」という脅迫電話が国鉄本社に入った。警察と犯人グループの攻防、パニックになる車内、絶対安全な新幹線の威信をかけて無事に列車を停めることを至上命令とする国鉄輸送司令室や、次々に危機が迫るひかり109号のあわやという場面をスリリングに描く。


動脈列島
(1975年/東宝/)
新幹線の騒音公害に憤った犯人が新幹線を止めようとする。


カサンドラ・クロス
The Cassandra Crossing
(1976年/西ドイツ・イタリア・イギリス/129分)
強い感染力を持った病原菌に感染したゲリラが列車に乗って逃走。列車を鉄橋ごと爆破し抹殺しようとする軍と、それを阻止しようとする乗客の格闘。


『皇帝のいない八月』
(1978年/松竹/140分)
寝台特急さくら号がクーデターを企てる自衛隊の決起部隊にハイジャックされるサスペンス作。


大列車強盗
The Great Train Robbery
(1979年/アメリカ/111分)
ヴィクトリア朝大英帝国がフランスに支払うために輸送していた金塊が列車から強奪されたという実際の事件を基にして描かれた小説を映画化。


暴走機関車
(原題:Runaway Train)
(1985年/アメリカ/111分)
黒澤明原案。四重連の機関車が暴走。



暴走特急
(原題:Under Siege 2: Dark Territory)
(1995年/アメリカ/99分)
ティーブン・セガール主演。『沈黙の戦艦』の続編。

暴走特急 [DVD]
ティーブン・セガール, エリック・ボゴシアン, キャサリン・ヘイグル / ワーナー・ホーム・ビデオ ( 2009-09-09 )


『マネー・トレイン』
Money Train
(1995年/アメリカ/103分)
ニューヨーク地下鉄を運営する公団が各駅から集金のために走らせる時刻表に載らない列車、「マネートレイン」を強奪しようとする鉄道公安官。


名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』
(1997年/東宝/95分)
東都鉄道東都環状線の線路上に爆弾が仕掛けられ、時速60キロ以下になると爆破するというシーンが登場。


古畑任三郎 #37,38「最も危険なゲーム」』(テレビドラマ)
1999年放送の第3シリーズ最終回。テロを行う動物愛護団体SAZが鞄を取り戻すため、指令センターの回線に侵入し制御盤上で列車乗っ取りを偽装する。千葉県の小湊鉄道でロケ。

劇中の「コントロールセンターのジャック」は、レニー・ハーリン監督作『ダイ・ハード2』(1990)からの引用である。また、「コントロールセンターでの犯人との交渉」は、ジョセフ・サージェント監督作『サブウェイ・パニック』(1975)からの引用であり、日下のボールペンの音はマーティン・バルサムの「くしゃみ」の変形である。

http://homepage3.nifty.com/furuhata/contents/episode/episode3738.html


『アトミック・トレイン』
ATOMIC TRAIN
(1999年/アメリカ/121分)
ロシア製の核弾頭を積んだ貨物列車が暴走。


『TUBE』
(2003年/韓国/116分)


交渉人 真下正義
(2005年/東宝/128分)
踊る大捜査線』シリーズスピンオフ作品。東京トランスポーテーションレールウエイ(TTR)の実験車両が「脇戦」(回送用の連絡線)を使い路線を乗り換えながら暴走する。横浜地下鉄・神戸地下鉄等でロケ。


アンストッパブル
Unstoppable
(2010年/アメリカ/98分)


番外

『スピード』
(Speed)
(1994年/アメリカ/115分)
バスに仕掛けられた爆弾が時速50マイル以下になると爆発する。脚本のグラハム・ヨストは『暴走機関車』の原案である黒澤明が書いたオリジナル脚本を読んで思いついたと公表している。